雑記

desiderium

ふと口から漏れた言葉が「共鳴している」人伝てにでも探し物をしたわけでもなくただ降りてきたただ言葉となって繰り返されないただ一語をあなたは繰り返す 色の溢れたゴテゴテした場所ではなく無機的な部屋がいいのは交わるものに色が付いていないから目を閉…

in silence

手と手が重なり両胸を温める。温もりは去らなかった 秘密が重なって繋がれて行く。箱を開けて二人だけのものにする 言葉のない夜の時間。灯りをともせば口元がほころぶ 交わした言葉の上に立って沈黙する。足元を見ることなく 差し込む光に貫かれる。眼裏にも

naked

自然であるとはどういうことか。生まれ落ちたままの姿で微笑んでいる。化粧は剥げひどい顔だけれど、安らか、平穏、愛に満ちた時間というものがそのまま表れている。そこに生まれ落ちたかのように。過去も未来もない、ただその時間がある。何かを身につける…

あさ

あしたに鴉が鳴くという 夢の錘も眠たげに 風見鶏たち巡らせて ひとつ吐息を吐くという 朝靄に消えていった針鼠 怒った太陽の影法師

寓話

二人は愛し合っていた。片方が死に片方が生き残った。彼/彼女は生き続けた。彼/彼女は何度も思い起こされた。しかしその頻度は減っていった。色はだんだん褪せていった。最後の葉が一枚落ちるように記憶は途切れた。消えたのではなく意味をなさない。落ちた…

ロンド

後ろで中国人が騒いでいる。何かを言葉にしている 鳥が船と並行する。二つの 物体は進んでいる。急激な高まり 嘴が掠めたような気がした。餌を 歓声のような言葉。鳥の翼 楕円形の湖をどう進んでいたのか。船が 鳥がどこへ消えた行ったのか。島へ 誰もいない…

柔らかいもの

ひやっとするガラスも都市の中では柔らかい。通り抜けできるかのように私を映す。後ろには反復する通行人。何度も通り過ぎた場所。その度に自分の姿を確認する。切り取られた景色は機械の中に放り込まれる。柔らかいもの。アスファルトの道端で咲く真っ赤な…

匂い

耳元に顔を寄せれば私の匂いがする。情景の繰り返し。 子供の頃行った海水浴場の潮の匂い。他の海ではそんな匂いはしなかった。目でもなく耳でもなく、結び付いた記憶が身体中に満ちる。見えないもの、聞こえないもののほうがより大きな体積を持つ。 耳元に…

ASAP

金曜の夜少しだけ声を聞けた。例えば毎晩夜が更けるまで長電話するとかそういうことはできない。土日はラインが来ないこともあるし会う可能性はゼロなので、金曜の夜はとりわけ寂しい。だから声が聞けて、話せてよかった。 欲情、痴情。今朝仕事の勉強になる…

the end in sight

そこには花もない。春の風の吹き込む窓もない。あるものと言えばなにもない。薄茶色のカーペットの上を行ったり来たりする。ただヒソヒソ話のつもりなのか、空っぽの空間に響き渡る。部屋にずっといるのよ。全然出てこない。ただ歩いてる。一歩にも満たない…

私は自分を彫刻してきた

私は自分を彫刻してきた 何か言い表わさなければならないとしたら。 マーク・マンダース展の図録を見返していたらふと浮かんできた。 完璧に構築された彫刻作品とインスタレーションの空間。 彫刻には平面作品と違う憧れを持っている。手でこねられた、打ち…

again and again

離れると愛おしいねと水遊びのように繋がって揺れて離れた時。どんな風とも違う風呂場に響く音。多分離れると寂しいような意味だろうけど、口に上るままの言葉は胸に直接飛び込むようでいつまでも響く。今までの何とも違うから今自分がどんな状態にあるのか…

grey

つい赤いものに目がいってしまうけど赤ばかり撮りたい訳じゃない。密やかに息づくもの。上下する胸や静かな寝息のようにひっそりと佇むもの。ふっと漏れるため息が死を予感させる。死んだ魚を撮っていた時わたしはその形を見ていたのだろうか時間や記憶を見…

六日目

清廉潔白の何としぞ山に茸を取りに行くか ふるへてふるへてふるへてfの腰らへん 五日目の夜に取り出だしてみれば遥かなる絶頂 踏まれたく思ふひととのふいになる約束など最初から 赤きものPCに繋いで充電されるのを待つてゐる 赤光を開いて数ページ 伏せるカ…

moved

存在があやふやになった時書くのかもしれない。 ふわりとした時、多像のようになった時、かすれて痕が滲む時、揺さぶられた揺り動かされた時。そういえば英語で感動はmovedという。存在自体が危うい時も身が宙に浮いているように心地いい時もある。動かされ…

「浅草紅団」

川端康成「浅草紅団 浅草祭」講談社文芸文庫 昭和初めの浅草に著者自身が潜入するようなルポ風小説。不良少女に娼婦、浮浪者。浅草公園は日本中から失業者、家出人、犯罪者が集まる、日本の掃き溜め。浅草公園てどこだ?と検索してみたら出てきたのは浅草公…

オペ

Operation 女性 (医療) 手術。 (軍事) 作戦。戦略。 (数学, 情報技術) 演算。 冷たい目をした麻酔医に心奪われる。左手の甲にすっと針を刺される。心地よい痛み。だんだん目を開けていられなくなる。もう目覚めなくていいのに。あなたのいない世界。家庭内の…

デュシェンヌ・スマイル

デュシェンヌ・スマイル 19世紀のフランスの神経学者 デュシェンヌが筋肉の動きから定義した「真の笑顔」 がんばった、と独り言いってすやすやと眠りに落ちたNはかわいかった。十こも上のおじさんなんだけど。電車の中で来週のサザエさんは〜と小声で言って…

ataraxia

ataraxia アタラクシア、心の平静不動な状態。 通ってる病院のすぐ近くには昭和記念公園があって、ほとんど病院に行く度に散策している。全部歩こうと思ったら一日がかりになりそうなほど広大な公園。 門を入って目の前に広がる緑。だだっぴろい緑鮮やかなく…

そこにいて、そこにいない

お腹の痛くなった夜、帰りの電車で別れ際、手を握って口付けた、その手は私のようで私でない。そのシーンを繰り返し思い出す。前の席に座っていた女性はちょっと戸惑ったような顔をしていた。気のせいかもしれないけど。 夜中に車の中でしばらく握られていた…