病院

9時半の予約。スクリーニング検査、とは可能性のある人を見つけるための検査。PCR、とは「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase Chain Reaction)の略でウイルス等のDNAを増幅させて検出する方法。前に、民間でやってる二千円くらいで受けられる唾液の検査はやったことあったけど、テレビでよく見る鼻の検査は初めてだった。痛いと聞いていたし、映像で見る人たちも痛そうにしてたからそういうものだと思っていたけど、横向きで上を向き、看護師さんらしき女性にやさしく言葉をかけられながら、そっと奥まで入っていく綿棒らしきもの。こんなに奥は深いんだと、そりゃ繋がっているんだから、そうなのだけど。そしてそっと戻ってゆく。つんとしたけれど、痛みはなかった。初めて体験するものは面白い、と思うのは年をとった証拠だろうか。その後の採血では若い男に粗雑に針を刺され、数時間後ガーゼを外したらはっきりと血液の痕がありそれみたことかと。

大病もしたことはない、小さな手術とバカでかい扁桃腺と、たまに風邪をひくくらい。高熱を出すこともほとんどない。最近はよくわからない微熱を出すけれど。婦人科にはなぜか度々。記憶のない赤子の頃と中高生の時はアトピーで苦労した。

今日は母親が医者と会っておきたいというので途中から一緒だった。診察になってもしばらくパソコンでなにやら確認していてフムフム言いながらしばらく無言。しばらくしてからようやくこんにちは。手術の時は?ああ是非いて下さい。え、5時間もかかるのに?

なにか私はもうひとりの世界にいるようだ。いや、そんな待っているのは大変だろう。意識はどうやって遠のくのだろう。

陽性の時だけ連絡が来るというのでスマホをちらちら見ていたが、鳴る様子はないので安堵する。白黒フィルムを現像に出したのももう連絡が来るはずなのに来ない。たくさん撮ったのに。顔。顔が変わるかもしれないから。顎の手術で顎を上下とも切る。

コンプレックス、とは感情の複合。その内の劣等複合が劣等感として捉えられている。

矯正歯科を何件かまわって、みんな手術しないと難しいかもと言われた。自分ではそんなに意識していなかったけど、ひとからシャクレとか言われたり、したことが写真にはもろに写る。写真をやってなかったらここまでの決断には至らなかったかもしれない。

鏡に向かってカメラを向ける。スマホで隠れる口元。あるいはマスクで。そこに何かの甘美さがなかっただろうか。あるいは痛みの。

口付けの

顔も見えない口付けの甘さ