afterward

ベッドの向かい、テレビの前に置かれた黒い箱の花。枯れることのない、半永久的に保たれた色とりどりの花。黒い箱も真っ黒な髪留めもリーデルのワイングラスも蜂蜜の空瓶も棺のよう。隣には昔Amazonウィッシュリストに冗談で載せておいて贈られてきた鹿の角の燭台が置いてある。捨てるもの、捨てないもの。Nがくれたものはみな綺麗なもの。

この前一緒にリーベルでパフェだけ食べたRとラインのやり取りだけ続いていたが、なかなか誘ってくれなくて、忙しいのかあまり会う気がないのかと思っていたら、私が手術した話をして、えらく苦労してパフェを食べていたから11月になったらと思っていたという。なんだ。17時にアルタ前で待ち合わせ。何か記憶と違う。ああ髪を切ったのか。そして営業マンらしい電話をしている。

アルタから歌舞伎町に入っていく道。煉瓦の道で溝がたくさんあってヒールはとても歩きにくい、と歩く度に思う。9センチのジミーチュウのピンヒール。もうたくさん歩いても痛くならないけどこの道は難関。予約のお店がすぐそばで助かった。スミヤというイタリアンバル。時間が早いのでまだ誰もいない。ゆったりしたソファー席に通される。少し薄暗い地下のくすんだ色。大きな黒板の謳い文句だけで心惹かれる。目に鮮やかな前菜の盛り合わせ。しっかりと肉の味のするパテドカンパーニュ。もう赤ワインが飲みたくなる。ちゃんと作られた料理はおいしい。人の味がする

最初に会った別れ際の、そっと握ってきた手の冷たさ。随分たくさん話をしてたくさん笑った。素敵なワンピース。褒められてうれしいもの。柔らかい人。その柔らかさに嘘はない気がするけど、既婚だし。動物でいうとなんだろう。カモノハシ?

スパークリング1杯、南イタリアの苺の味のするサンジョヴェーゼをデキャンタで、欠かせないデザートにフランスの何だかのデザートワイン1杯。いい気分。

方向音痴だから、ホテルに行くのかなあと思ったら、駅はこっち。もう駅は見えるのだけどなんとなく、手繋ぎます?と言って自然に手を繋ぐ。しっかり握られた手。Nと手を繋ぐ時はいつも高鳴るものがあったけど、あれは欲情していたのか。飲んでいる時ふと顔を見て、したいなと思ったのは事実だけど、今はなんにも思わない。バスタの上になにやらと言われ夜のお散歩。へえこんな場所が。たくさん並んだベンチやらなにやらで男女が入り乱れている、いや密着している。タカシマヤとかサザンタワーとか下にホームと電車を見れるこの場所は好きな場所。ホームで電車を待っている人は上なんて見上げない。

触れている体に、夜の数寄屋橋公園で話をしたことを思い出す。ゆっくりとした食事をとってホテルに行く時間もない時だった。夜の暗闇と光の中で、語り合うのはいいものだ。欲にまみれることもなく、顔もたいして見えはしない。少し寒さを感じたから、帰りたくなる。絡み合っていて離れがたい男女をよそ目に見ながら改札へ向かう