気圏にさまようあの構想の魂が彼を襲った。彼は夢の共和国を、詩の主権領土を宣言した。何万エーカーとかの地域、森のあいだに投げ込まれた布切れーーそこに彼は幻想の専制を声明した。・・・・・・狼や盗賊に追われた人は砦の門に辿り着けば救われる。勝利のなかで迎えられ、埃まみれの服を脱がされる。生気を取り戻し、歓喜に満ちて、彼は<エリュシオンの野>の風のなかへ、ばらの花の甘い香気へ踏み入ってゆく。
ブルーノ・シュルツ「夢の共和国」
<明日>は存在するのか
クレプスイドラが巻き戻す
時間の裂け目
灰色の時間の間断のなさ
深い眠り
立ち現れるひとがたの
足跡のない
途方に暮れることもない
少しだけ立ち止まってみた
それだけのこと
束の間の眠りのように
赤子が握る指のように
その手を
半睡で確かめただけ
温もりがあったかも定かでない
クレプスイドラ
目と目を見交わす
逆さまになって