徒歩2分

ぱっとしない日。指名は一人でゼロよりはマシだけどほとんど電話も鳴らず閑古鳥なお店。大丈夫なのかと思う。事務所が待機場所にもなっていて人数も多くなくお店の人もほんわかしてるのでアットホームとさえ言える。こたつみたいなテーブルにはお菓子とかパンとか置かれている。たいして動いてもないのに漫然と食べていたら確実に太る、と躊躇する。その日のお客は触り方が雑だし口臭はあるし、でもけっこう気に入ってくれたみたいで話もできて次はもっと長い時間と言っていたので一応期待しておく。

臭いは苦手。Tさんとワインから香水の話と匂いの話になって、少し色めく。女の匂いがすると言われたことがあると言ったら、耳の後ろや首筋、胸の谷間から香るのだという。自分の匂いというのは自分ではわからないから興味を惹かれる。Tさんは無臭タイプで香水もつけないそう。以前M男性と会っていた時は無味無臭な人がいいと思っていた。まだ20の若者のかすかな腋臭は心地いいものだったけど、やっぱり体臭は苦手。

もう電話は来ないなという終わりの時間、ここら辺でおいしい飲み屋について聞いてみる。鶯谷はほぼ制覇してるそう。飲み代に消えるのが惜しいくらいの稼ぎだけどちょっと探索してみる。教えてもらったところは満席、駅の近くの外で立ち飲みしてる人もいるようなとこはちらっと見ただけで入るのは躊躇う。そんなお店はまだ入ったことがない。下町の。たぶんもうひと月くらい経てば入れるようになるかもしれない。

濃いピンクのピンヒールを持て余すように、ぼわんとした気持ちで駅に帰り着く。いつも通り過ぎるだけのいつも賑わってる感じの居酒屋。絶対おいしいのだろうなとは思っていた。思い切って戸をガラガラと開ける。明るい店内。コの字型のカウンターだけのお店。さっき瓶ビールがおいしいという話をしたから瓶ビールを頼む。常連同士がカウンター越しに話をしている。思い切り地元の話で面白い。店主は同年代かもっと若いかとても気さくで、かわいい女の子がまた人気者らしい。同じく新規のお客さんに話していて思い出す。ここはもともとラーメン屋だったのだ。親に連れられて何度も来てるくらいに昔から。そういえばこのカウンターの形もラーメン屋のまま。なんだかとても居心地がいい。

徒歩2分で帰宅。いい気分。明日への活力を貰った感じ。

徒歩2分...

また間違いなく