the end in sight

そこには花もない。春の風の吹き込む窓もない。あるものと言えばなにもない。薄茶色のカーペットの上を行ったり来たりする。ただヒソヒソ話のつもりなのか、空っぽの空間に響き渡る。部屋にずっといるのよ。全然出てこない。ただ歩いてる。一歩にも満たない…

ギフト

潮が引いた状態だと考えてみる。波は届かない。砂地が露わになる。欠けた貝殻や石、流木、海の藻屑。潮の満ち引きを信じること。 体がぎいぎい言うようで、頭も軋む。昨晩薬を飲み忘れたのかもしれない。仕事はお茶引き。一駅歩いて帰る。初めて歩く道。古い…

「浅草紅団」

川端康成「浅草紅団 浅草祭」講談社文芸文庫 昭和初めの浅草に著者自身が潜入するようなルポ風小説。不良少女に娼婦、浮浪者。浅草公園は日本中から失業者、家出人、犯罪者が集まる、日本の掃き溜め。浅草公園てどこだ?と検索してみたら出てきたのは浅草公…

この道

明日は雨が降るでしょう。てくてく歩いた足跡も洗い流してしまうでしょう。 明日は雪が降るでしょう。歩いてきたはずのこの道もやがて見えなくなるでしょう。 風邪をひいた。私はたまにしか風邪をひかない。体調を崩すことはある。心も体も繋がって。夜にな…

klepsydra

気圏にさまようあの構想の魂が彼を襲った。彼は夢の共和国を、詩の主権領土を宣言した。何万エーカーとかの地域、森のあいだに投げ込まれた布切れーーそこに彼は幻想の専制を声明した。・・・・・・狼や盗賊に追われた人は砦の門に辿り着けば救われる。勝利のなか…