2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

恵比寿

身を引きちぎられる。半身を。からだを髪の毛を腕を皮膚を。無理矢理に微笑んで手を上げる。さようなら。引きちぎられた身ごとあなたの口で食べられてしまえばいい。そのよく味わう唇と舌で。このお酒が、舌の奥の方で味わうと違う味がするという。舌の先の…

歌舞伎町

たぶん数人しか読んでない文章を書く。明日の天気はたくさんの人が気にするが私のことなど誰も気にしない。痛快だ。嫌な気分でいると嫌なものもよく目に入る。通りの隅を走るネズミ、赤いゴキブリ。歓楽街にお似合いな。汚いものでドロドロになるのもそれは…

飯田橋

ひりつく記憶を口の中に押しとどめて、手と皮膚の接地点に意識を向ける。よりによって不可思議なこの場所。あの人が通っていた場所。手が膝を愛撫する。伸ばした脚の緩やかな、もしくは僅かな曲線について。筋のつくる影について。関係性自体ではなくいろい…

piano diary

どこまで行っても辿り着けない 辿り着かない だいぶ遠くまで来てしまったようだけど まだ向こう側もあるようで、果てしない 歩みの数だけ遠のいたと思ったら すぐ傍にいたり 手の中にいたり 掴もうとすればひらひらと 蝶のように飛び去る 木々は騒めき、葉は…

赤ん坊

あなたのために生まれてきた 触れる喜び 曇りなき眼で見据える宙 写しとる影 歓声のうちに足を蹴る 見えないもののために 握った指先 握られた手の柔らかさ 潤んだ目で あなたを見つめる

渋谷

赤ワインの残るグラスの落とす影を見ている。ワインによってグラスが違うからTさんもそれを見て特別きれいだねと言う。赤い液体の影が揺れてる。入ったときはまだ明るかったけどもうすっかり夜。ビルの8階にある店内にも薄い闇。テーブルの向こう側にいるT…

a whole cake

盛大な勘違いにしろあの人には愛してると言えた。今はそこまで好きな人はいない。その時も別に呼び名はなかった。僕の彼女になって下さいみたいなことを言われたような気がするが、向こうはどう思っていたにしろ私にとっては特別な人。さゆりちゃんと呼んで…