日記

収縮

伸びるというのは健やかで窓辺に置いた豆苗がそれぞれ高さもばらばらに伸びているのを見ると生きている感じがする。周りのドライフラワーやガラス器やヘンテコな自作の陶器たちもそれにつられて生きているような感じがする。それはおそらく大きな窓から朝の…

夢を見ていた。道に立っていて何かを待っていたらそこは中華料理店に入る列になっていてそのまま入ってしまい3500円のコースを二人分頼んだ。あの人を待っている。なかなか来ない。随分待っていた気がする。結局来たのか来なかったのか、夢はもうあやふやに…

大崎

何も書く必要がないような気がするところをあえて書いてみるとどうなるのか。大概はそんな書き方をしている。今といえば即席チゲ鍋を食べて暖房の効いた部屋で汗ばむほどだが冬もようやく本番となりまだベッドの中にいる時にザクザクと霜柱を踏む音が聞こえ…

atmosphere

東京駅前の商業ビルの上、金曜の夜の始まりのほうの時間でこれから確実に騒々しくなることが決まっているレストラン階。ネオンでも煌めくんじゃないかと思う。それぞれの店の境界も曖昧なオープンフロアだから色々な食べ物や匂いや音も混ざり合う。通路に並…

そば

昨夜はスパークリングを空けた。一昨日はワインをたくさん飲んだ。たぶん換算すればボトル1本くらい。今日はさすがに飲まないでおこう。というか寝ている。爆弾低気圧が通り過ぎるらしい。眠い。今朝は妙な夢を見た。夢は大抵妙なものだから現実的なものだと…

柔らかいもの

ひやっとするガラスも都市の中では柔らかい。通り抜けできるかのように私を映す。後ろには反復する通行人。何度も通り過ぎた場所。その度に自分の姿を確認する。切り取られた景色は機械の中に放り込まれる。柔らかいもの。アスファルトの道端で咲く真っ赤な…

寝ている時に無意識にネグリジェを破いてしまい片方の乳首が露わになっている。無意識にというのは破いたことを覚えているのだから矛盾してる。寝ている時も正確には寝ぼけていた時か。おそらく何か不快感を感じて。 昨日今日とやけに現実的な夢を見た。ある…

焼き魚

昨日はパンが食べたくてスーパーでたくさん買ってきて食べた。今日は焼き魚が食べたい気がする。一人だとなかなか魚を一匹焼いたりしない。そうなるとどこかへ食べに行く必要がある。ちなみに今はベッドに横たわっている。寝巻きのままである。昨日パンをた…

マドレーヌ

梅雨末期の大雨に真夏のような暑さ。昨晩はぐしょ濡れのように帰ってきて即シャワーを浴びた。 濡れそぼる君の袂の滴をば枯らすものなら秋も憂きもの もうすぐ生理の予定なので早めに休み期間とする。わりあい働けたから。というところで注文した古書の「失…

さまよう物語

矛盾に満ち、野蛮で、不安定で、漂うような物語のことを、プリニウスは「さまよう物語」と呼んだ(『博物誌』第五巻三十一章)。それはまた、最後の王国でわたしが実践する、王のごとき人生でもある。 パスカル・キニャール「静かな小舟」 履き慣れないサンダ…

雨滴

雨音が家を打っている。部屋の中だから濡れることはないけれど、家の様々な部分に当たりその分いろいろな音を響かせるから、ちょっと煩いよう。強すぎるので心地よくない。窓を見れば木の葉が風に揺れている。静けさには影があり、それが詩なのだというよう…

ハチミツ

Tさんは足を噛む。足の裏、踵。噛むというか齧るというのか。甘噛み、といっても少し痛いくらい。ふくらはぎ、太もも。内腿を噛まれるとかなり痛い。でも後で内出血になってたりすると愛おしくなる。噛み跡よ。下から上へと唇と舌が辿る時の恍惚。ベロベロ舐…

ASAP

金曜の夜少しだけ声を聞けた。例えば毎晩夜が更けるまで長電話するとかそういうことはできない。土日はラインが来ないこともあるし会う可能性はゼロなので、金曜の夜はとりわけ寂しい。だから声が聞けて、話せてよかった。 欲情、痴情。今朝仕事の勉強になる…

サクラ

土日とも雨。桜が満開になると花散らしの雨というものが降る。それはいいとして天気が悪いとどうも体調が思わしくない。昨夜は10時前にベッドに入ったのに起きたのは8時近くで今日もとっくにエネルギーが切れている。だからこんなにダラダラ書いてるわけには…

only connect

伊勢丹の地下という既視感のある待ち合わせでワイン売り場の中、背中から出会う。振り返るとその人がいて同じようなことででも全く違う。日々の営みも時間も出来事も繰り返されただ少しだけの違いのようでまた新たな生を生きている。プログラミングされた遺…

a piece of cake

混じり合っているように思える。全く別個の物体なのに。体なのか心なのか、どこかの一部になっている。苦痛でも快楽でもなく、ただ不可思議。ただそこにいるのに隣にいないのが不思議、といつか送られてきたように。何枚か数えもしなかったプリントたちを、…

錦糸町

錦糸町。という言葉だけでよみがえる。ホテル街。バリアン。駅ビルの寿司屋から見えたスカイツリー。10年に一度ともアナウンスされる寒波に吹き飛ばされそうな夜帰宅して翌朝を憂いながら眠りにつく。道路が凍りませんように。心も凍りませんように。暖かい…

intimate

鏡に映った自分を見ているとこの人間は誰とも親しめないだろうと思う。誰とも親しむことはないだろう。腕を宙にあげてゆっくり動かしてみる。現代舞踊のような、何か瞑想みたいな。鏡を見ている時、単なる見るという行為が自分を覗き込むことになる。水面で…

ギフト

潮が引いた状態だと考えてみる。波は届かない。砂地が露わになる。欠けた貝殻や石、流木、海の藻屑。潮の満ち引きを信じること。 体がぎいぎい言うようで、頭も軋む。昨晩薬を飲み忘れたのかもしれない。仕事はお茶引き。一駅歩いて帰る。初めて歩く道。古い…

again and again

離れると愛おしいねと水遊びのように繋がって揺れて離れた時。どんな風とも違う風呂場に響く音。多分離れると寂しいような意味だろうけど、口に上るままの言葉は胸に直接飛び込むようでいつまでも響く。今までの何とも違うから今自分がどんな状態にあるのか…

早稲田

自分たちが裸であるということ。肉を触り確かめ合うこと。見つめる瞳に自分が映っていること。声が互いにこだまして言葉が胸に刺さること。 こんなに急な階段を登っただろうかという記憶の不一致と光と木々の中の白い建物をぼうっと見ていたら向こうからやっ…

10月

秋が深まるように気持ちも深まっていく。愛という言葉を言い出したのはだれ? 日本語で愛というのはなんて言うのだろう。英語みたいにI love you とはいかない。好きなものはたくさんあっても愛するものは限られている。慈しみ、哀しさ、憎しみの裏返しな激…

体を触る。触れられればいいのに。あなたの手で。刻一刻と変わっていく体を、たどっていく。乳房は、なんと柔らかいことだろう。何のために。ふくらみのやさしさ。女同士が口づけを交わす。唇が辿ったかもしれない、稜線を。眠りの中に忘れてしまった、あな…

潮沫

潮沫のはかなくあらばもろ共にいづべの方にほろひてゆかむ 斎藤茂吉「赤光」 雨の朝。じっとしてると少しの冷たい空気、湿度。入院にも持っていった二頭の鹿が描いてあるクッションを抱える。物憂い。雨のせいだけじゃなく、退院してから鬱気味になっている…

葉山

ぱっくりと開いた 大きな傷口 無数の 対称ではない。非対称であることの、震え。常に揺さぶられている時間。声の振動。 並んで歩く。前を歩く、後ろを歩く、座る、手を繋ぐ、塞ぎ塞がれる、張り付く、離れる、結び解かれる。二人 作品を見ながらお喋りしてい…

9月

雨。体が鉛のように重い。違う本を少しずつ読む。映画を観に行く意思は消えた。四冊読んだところで電話。陶芸教室の先生。最後の作品を受け取りに行くのを忘れていた。いつも忘れる。雨雲を確認して重苦しく外へ出る。ひんやりした空気が気持ちいい。でも体…

絶望

通り越しても すれ違っても 見失うもの 変わることは楽しいことでもありながら恐ろしい。目の前にいる人が、もうあの人ではなく。繋いだ手が冷たくて少しゾッとする。どこに行くの?変わらない問いかけ。 ひと月ぶり近い。タチの悪いウイルスに罹っていたら…

sicut cadaver

きりきり舞い きりもみ 体ごと何処かへ 打ち寄せる しかばねの 避けられるだろうか 踏まれるだろうか あるいは鴉に まだ温い 砂のようなシーツ うとうとしている腕や背中を指でなぞる。その手首にはゴールドの華奢なブレスレットの鎖が揺れて光るのを見なが…

Remind Me Tomorrow

少しでも離れていかないで 小舟のように揺れていましょう 繋がったまま 100年だか50年だかに一度咲くというリュウゼツランが全国各地で一斉に咲いているという。5月からぐんぐん背丈を伸ばし、屋根より高いほどの場所で、赤やピンクでもない黄緑色の花。何か…

汐留

堰き止められた汐は海へと散っていく。 満たされたもの故の哀しみ 馴染みのビストロの二階、店内は見たところ満席なのに、両隣からも空間に満ちた音もうるさく感じない。目の前にいるTさんとテーブルで隔てられてはいるけどとてもスムーズに会話ができる。何…