柔らかいもの

ひやっとするガラスも都市の中では柔らかい。通り抜けできるかのように私を映す。後ろには反復する通行人。何度も通り過ぎた場所。その度に自分の姿を確認する。切り取られた景色は機械の中に放り込まれる。柔らかいもの。アスファルトの道端で咲く真っ赤な彼岸花

紺の絹地のワンピース一枚越しの私のお尻は柔らかい。触ったあなたの手の中にいつまでも感触が残りそのあなたの感触に私は満たされる。冷たいエスカレーターの右にも左にも反射された二人がいる。確認する必要もないくらい明白だからちらっと覗くだけでいい。ただの通り過ぎる景色でも網膜に刻まれるような。

しこたまワインを飲んで歩いている。いつの間にか改札に着いている。私は乗りあなたは乗らない。抱いては口付けし抱いては口付けし何度めかでようやく放たれ歩き出す。靴が行き先を知っているように、地下鉄の階段を降りる。