二月の雪

そのうち物語で溢れてしまうんじゃないか。なんだか胸がいっぱい。あなたの、あなたの記憶。数え切れないほどのあなた。瞬時に降り積もっていく記憶はすぐにあなたを甦らせる。戻ることのないあなた

翌日の午後になってようやく返事が返ってきて狂喜する。嫌われたわけじゃなかった。まだ物語を楽しめる。作っていける

あの人はドライな人だったけどそれはひとつの諦めで私のことも手放した。このまま手をずっと繋いでいられるんじゃないかと思った時もあったけど、あっけなく断ち切られた。それでも少しも嫌いにならない。あの人以上に相性のいい人とこの先巡り合うだろうか。何度でも甦える感触が消えるときなど。再び目覚めてしまった体は苦しい中に嬉しさもある

洒落たパン屋で買ったエスカルゴバターは別にエスカルゴが入ってるわけではなくエスカルゴ料理に使う香味野菜入りバターのことだった。パンに塗ったらガーリックトーストになる。いつものトーストに塗ったら鮮やかな緑色。春が来たみたいな、雪の日の翌日に咲いたヒヤシンス。小さなハエも一匹飛んでいた。生き物を久しぶりに見たような

今度の雪はすぐ溶けそう。春の混沌も近い