2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

明るい部屋

鏡ばかり見ていた。不確定な自分の顔。母親はそんな変わってないと言う。私はまだ慣れない。特に何も聞かなかったから、どこをどう切ったのかとか、レントゲンもちゃんと見てない。口の周りの痺れた感じ。バンドを外した翌日が一番顔がぱんぱんになってそれ…

一週間目

それほど殺風景でもない、クリーム色の空間にいる。大きな窓がさっきから時々稲光り。何かの信号なのではないか。さっきは冷房で凍えていた。毛布にくるまってままよとナースコールを押し持参の頓服をもらう。持参の薬は管理されている。クリーム色というよ…

前夜

去年のこの日、葉山の一色海岸へ行っていた。豊饒の海へ導かれるように。遠い海の記憶。あれがたった一年前のことだなんて。 今は海の、波の音ではなく秋虫の合唱が聴こえる。公園ではもう彼岸花。 紺の麻のワンピースの記憶。波が足を洗っていった。 悪夢の…

next

キスがしたい。入ってきて欲しい。この前焦らされた。笑みを浮かべながら。 遊んでる。弄ばれてる?お互いが遊んでる。 それぞれの世界で 真っ赤な嘘。真実、日の丸、情熱、血糊。 今夜も赤ワイン。赤いローストビーフ 今夜も遅いんだろうか。 二頭の鹿が描…

病院

9時半の予約。スクリーニング検査、とは可能性のある人を見つけるための検査。PCR、とは「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase Chain Reaction)の略でウイルス等のDNAを増幅させて検出する方法。前に、民間でやってる二千円くらいで受けられる唾液の検査は…

灰色

生まれ変わったら何になろうか 虹色の蝶かな 両の羽の鱗粉を飛ばして きらきら光って消える ニケの翼みたいに 剥がれ落ちた一枚一枚の鱗 かき集めたら手の上に乗せて あなたの手を握れない 生まれ変わったら 赤い心臓も石にして くれなゐの、くれなゐの マリ…

encounter

あと数日。展示を見に行くのも最後だろう。銀座に決める。特別人が混み合うこともないし、華やぎがある。モノクロームの濃淡のある水玉のワンピース。気持ちも体もぐったりと重たい。横になってしまいたい。縦を横に。重力に従って。でも、行かなくちゃいけ…

ストロベリーショートケーキ

いまはきっとこえがとどかないとおもうけどさゆりちゃんがてをはなさないかぎりぼくはそばにいるつもりだよ 醜い醜いケダモノは甘い甘いイチゴショートになる必要があった。真っ白い生クリームに真っ赤なイチゴ。ショーケースに並んだ甘い甘いものたちからた…

the blue lady

昼間カーテンにいた蜘蛛が夜にトイレの壁にいて、今朝またトイレの床にいた。一体何を食べて生きているのか。見えない虫でも食べているんだろうか。もう何日も顔を合わせている蜘蛛はみな同じ蜘蛛なのか。昨夜Nと交わしたラインはひどく事務的だった。眠かっ…

cinema

昼間でも薄暗い 湿り気を帯びている びしゃびしゃになったあの記憶 あの水はどこから来るの 薄暗い場所で薄暗い場所に 伸びる誰かの手 昼間はくそくらえ 森の中 周りには誰もいない あなただけ 水が溢れる 流れるスクリーン ジャズが流れて タバコぷかぷか …

レバー

肝臓 英語 liver ,ドイツ語 leber 生きるってなんだろう。あなたが生きてるから私も生きてる。 反射でしかない 夜中に怖い夢を見た。食べるものがない。冷蔵庫の中を見てもなんだかいろいろ詰まっている様子なのに食べるものがない。怒った私は包丁を手に取…

甘い水

雨の日は匂い立つという。甘い香り。 私にとって媚薬の効果になることに気付いた、エルメスのH24をつけていなかったから物足りなかったのだろうか。 待ち合わせの時なかなか会えなくてそこから不安は始まっている。傘が頭に刺さりそう。 夏がひと息に終わっ…

海岸での対話は長すぎる

海岸での対話は長すぎる ヨーゼフ・ボイス「シベリア横断鉄道」冒頭 入院前会うのは最後になるかなという予定もあったがまた来週も会える予定。散々行きたい行きたいと言っていた渋谷のモナトリエに行けて満足。ひとつひとつが個室めいてるのでよくわからな…

dog

会う前日の息切れ。 二週間なんて短いのに長い。 こんなに会えると思わなかった。Nには少し翼がある。 マメと言うならマメと言うんだろう。娘にも執事っぽいと言われてるとか。 あなたは、何? アルコールを入れないとうまく話せない。 早く入ってきて 犬と…