the blue lady

昼間カーテンにいた蜘蛛が夜にトイレの壁にいて、今朝またトイレの床にいた。一体何を食べて生きているのか。見えない虫でも食べているんだろうか。もう何日も顔を合わせている蜘蛛はみな同じ蜘蛛なのか。昨夜Nと交わしたラインはひどく事務的だった。眠かったのもあるけれど、何一つ甘い言葉はなかった。明日の待ち合わせの確認。寝る前に入ったトイレにいた蜘蛛が、Nよりも近しい存在に思えた。

会う前日はなぜか鬱になる。あの重たい感覚はどこからやって来るのだろう。振り払えない見えない闇。重たくて動けない。ベッドに寝てしまいたい欲求に駆られたけれど寝たら起き上がる時がしんどい。部屋にうずくまって、本を読む気にもなれず、写真の箱に手を伸ばした。写真屋でやたらとプリントしていた時期があった。大体ハガキサイズの写真が大量にある。どうでもいいと思うもの、やっぱりいいと思うもの。スクエアの写真は小さめのマシカクプリントというのにしている。街のスナップがほとんどの中に、ホテルで撮り合った後ろ姿の写真があった。後で調べたらまだ春の時の。人気のある洒落たラブホテル。その中でもいい部屋だった。広くて遊び回れるような。面白いから写真を撮りたくなる。Nの背中。背中に腕を回してぽりぽり掻いている時。隙をつく。ただのおじさんの背中と言われるが、私はいいと思った。カメラを渡して撮ってもらう。私も後ろに手を回していた。撮られることには慣れてない。でもけっこう上手い。二枚の写真を並べてみる。明らかに違う写真。ひとはそれぞれ視点を持ってる。同じ場所だということは分かる。二人の関係性も想像できる。全く違うタイプ。背中は多くを語る。

少しの自由を感じる

夜ふとデヴィッド・リンチの「ブルーベルベット」を見たくなりウイスキーを飲みながら見る。

ブリリアントな悪夢

鬱には映画を見るのがいいのかもしれない。いやリンチの映画というべきか

ブルーベルベットの甘美なメロディを口ずさむ