ハチミツ

Tさんは足を噛む。足の裏、踵。噛むというか齧るというのか。甘噛み、といっても少し痛いくらい。ふくらはぎ、太もも。内腿を噛まれるとかなり痛い。でも後で内出血になってたりすると愛おしくなる。噛み跡よ。下から上へと唇と舌が辿る時の恍惚。ベロベロ舐めたりしない。あくまでそっと。愛しい足よ、愛しい脚よ、口付けは愛よ。

末端の身体紐解く唇の辿る跡には蝸牛這ふ

ナチュラルだった

服のせいじゃない?

いやベッドの上でも

ヒール履いてないし

いやベッドの上でも

と笑う。自然体と簡単に言うが一番難しいこと。南向きの窓から曇り空の柔らかい日が差し込む。エカテリーナと名付けられた白い脚。まだ明るい時間のセックスは力も抜ける。柔らかな部屋のベッドの上で柔らかな体と体ぎゅっと抱きしめ合ったら一つになった。何もしてないのに。柔らかな光に包まれて中心から発光する

Tさんは結びついている時でも足を触る。その度に心の中でうふふとなる。蕎麦屋の女将さんをおねえさんと呼んだ時も、部屋から去る時、おやすみハニーと言われた時も。

ハチミツみたいにとろとろ