溜池山王

マダム・エドワルダは片足を高く上げ自分のぼろぎれを見せつける。毛むくじゃらで湿り気を帯びた蛸のように蠢くぼろぎれを...

変わった作りの部屋だった。広くはあるけれど入ってすぐ右側に大きなクローゼットとその横にグラスやらコーヒーメーカーやらミニバーの並ぶ引き出しとか。それを過ぎて右手を向くと通路の向こうに細い縦長の鏡がある。鏡で自分の姿を見つつドアを開けると少し古めかしいユニットバス、だがアメニティーはグレーとか白とか落ち着いていて洒落てる。部屋の正面には台のようなものと大きな鏡。左手に小さめの丸テーブルと向かい合うソファー、唯一の窓。薄いカーテンの向こうには高速道路や高層ビル。日が雲に隠れたり出たり、よく自然光が入って気持ちがいい。そして窓を背にして視界にはクラシックなベッド。荷物を置いて少し部屋を探索したらソファーに落ち着いて淹れてくれたコーヒーを飲む。

もう終わっている。過ぎたこと。翌日も翌々日も沈んでいた。御茶ノ水で飲んで前夜祭といいながら雪崩れ込んでしまった深夜の帰り。その時は酔っていたせいかと思ったが、開放された感じ。とても淫ら。まだ素面だというのに、足を丹念に探索されるから。向かい合わせのソファーで。

お腹が空いたから何か食べるもの。ルームサービスでクラブサンドウィッチ。今日は飲まないでやってみようというのも終わったから結局ワインと惣菜を下から買ってきた。どこどこホテルのクラブサンドが一番おいしいのだと言う。食べてみたくなる。台の前でメニューを見ながら何も纏っていない体が知らず鏡に映っている。スマホをかざすTさん。何してるの。いや鏡を撮ろうと。鏡の前でつい身をくねらせてしまうのはナルシストだからか。お尻を振るとすぐに手や指がやってくる。繋がったと思ったら次には台の上に乗せられたまな板の上の鯉。

昨日いつも一錠のむ薬を二錠飲んだからか、あるいは始まる兆しが見えているからか、今朝はようやく平常運転。あの日のゆったりした時間と同じ時間の流れ。少しの下腹の痛み。上に乗った時、指で恥部を押していた。あれはなんだったのだろう。その壁の奥にはTさんのペニスが入っている。とても気持ちがいい。直接的な快感ではなくどこか向こうで感じている。静かで緩やかで時折声が漏れる。

ようやくまた感じられる。蘇らせることができる。

美しいぼろぎれの話。