早稲田

自分たちが裸であるということ。肉を触り確かめ合うこと。見つめる瞳に自分が映っていること。声が互いにこだまして言葉が胸に刺さること。

こんなに急な階段を登っただろうかという記憶の不一致と光と木々の中の白い建物をぼうっと見ていたら向こうからやってくる姿が見えた。軽く上げられた手。その遠い距離と、認識できないほどの近さの距離。

一回目のセックスは素面で遊びながら。はっきりとした頭で相手を感じる。神楽坂で飲んで戻ってきて、二回目のセックスは貪欲。川のように思いが溢れ出して海の中に溶け込む。海の中は静かで何も聞こえないほど穏やかで、眠りを誘う。

帰り仕度をしたTさんは厚い褪せたピンク色のようなカーテンをぴっちり閉めてくれた。朝日が見えないと言うと、ゆっくり眠れるから。その通り、朝まで一度も目を覚まさず熟睡できた。もう6時半。私にはすることがある。淡くて優しい色彩に統一された、とてもクラシックで落ち着く部屋。この充分に大きくゆったりとしたソファー。どれだけの人がここで口づけを交わしただろう。上には緑の杯のようなものが描かれた額が飾ってある。

今はひとり、身を横たえる。裸で