雨滴

雨音が家を打っている。部屋の中だから濡れることはないけれど、家の様々な部分に当たりその分いろいろな音を響かせるから、ちょっと煩いよう。強すぎるので心地よくない。窓を見れば木の葉が風に揺れている。静けさには影があり、それが詩なのだというようなことを吉田健一が書いていた。時間にも音にも追われたくなく、ただ静けさの中にいたいけれど、胸は脈打ち呼吸も荒くなる。定かではない状態。不定形であることは心地いいことかも知れず、同時に不安定さが明るみに出る。低い位置にある怖いほどの満月に照らし出される。明白さ。そしてまた見ることについて考える。目の中に入れてしまうこと。静けさを愛しながら恐々と波音を聞くような。そしてまたその人からのメッセージと、その人に流れる時間と、その人との間に流れる時間を思う。川のように流れる。風雨。