ギフト

潮が引いた状態だと考えてみる。波は届かない。砂地が露わになる。欠けた貝殻や石、流木、海の藻屑。潮の満ち引きを信じること。

体がぎいぎい言うようで、頭も軋む。昨晩薬を飲み忘れたのかもしれない。仕事はお茶引き。一駅歩いて帰る。初めて歩く道。古い商店。建て替えられ無機質に光る歴史ある団子屋。

帰ったら映画を見ることに決めていた。アニエス・ヴァルダ「幸福」、ジェームズ・アイヴォリー「モーリス」、ロマン・ポランスキー「反撥」。メロドラマを挟んで怖い映画を二本みた感じ。自分の巣に帰り赤ワインを飲みながら部屋の照明を暗めにして映画を見る、満ち足りた時間。Tさんからラインが来る。なぜか心に響かない。

醒めてしまったのかと思う。ベッドに入り自慰にふける。どこにもいけない。潮は引いている。また戻ってくる。波に洗い流され満ちて溢れる