この道

明日は雨が降るでしょう。てくてく歩いた足跡も洗い流してしまうでしょう。

明日は雪が降るでしょう。歩いてきたはずのこの道もやがて見えなくなるでしょう。

 

風邪をひいた。私はたまにしか風邪をひかない。体調を崩すことはある。心も体も繋がって。夜になんだか喉が痛かった。灯りをつけて口を大きく開けてみる。私の扁桃腺はバカでかいらしいが確かに赤く腫れてるような気がする。時々あること。

翌朝少し微熱が出ている。7度を超えたら熱だ。私は滅多に熱を出さない。昨日から断食を続けるつもりだったが中止してゆで卵を食べる。完全栄養食品。その響きを信じて体が弱っている時はゆで卵を食べる。白く剥きたてのお肌のゆで卵。ゲランドの塩をつけて食べる。

葛根湯を飲んでとにかく寝る。寝れないけど寝る。熱があるので体が熱い。明日は良くなっている様に祈りながら寝る。夜。

翌朝、熱はない。元気だ!と思っていつも通りの朝食を食べ寝床になど入らない。出かけたくてうずうずする。日比谷の高架下でやっているアートフェアが面白そう。こないだバーに連れてってもらった時見かけた場所。初めて通る道を通った。提灯がぶら下がり飲み屋が連なっている狭い路地。向こうは新しくなっちゃってとかなんとか言っていた。再開発されたらしい。多分そこ。街の変化には目を見張る。

ニュースはすっかり戦争情報でコロナ関連が削減されてる。いくらか少なくなってきたのか、あえて情報を見ようともしない。連続での夜遊び。ツケが回ってきてもおかしくない。症状を調べると、喉がすごく痛いという。痛くて痛くて唾も飲み込めないほどだという。そんなのがたくさん出てくるからみんな乗っかって適当に言ってんじゃないかと適当に思うが喉の違和感が熱が下がっても消えない。ちょっと不安になる。

検査キットは結構な値段がする。検査するのに意味があるのかもあまり思えない。どれぐらいの人が罹ってどれぐらいの人が抗体を持ってるのか、でも何度もかかる人もいるみたいだし。というほうが知りたい。イギリスなどはもう大体みんなかかったから大体いいよってことにしたんだろうか。あの高齢のエリザベス女王でさえマスクをしないでカメラの前に立っていた。逆にエリザベス女王がマスクをしている姿の方が奇妙に見えるが。なんとなく。

その内に東京都が無料で検査キット送付してるってのも初めて知り申し込んで、私は意外に気が短いので前一度検査したとこで都民は無料でできるっていうの知り予約して受けてきた。受けてきたと言っても自分で小さな試験管みたいのに唾液を流し入れるのだけど。手は消毒したけど検温もやってなかった。陽性の場合医療機関受診してくださいと書いてあるがはてはて。こんなことは結果が出てから総評して書くべきなのだろう。やっぱり気が練れてない。

goyaで飲んだ人とまたお出かけしたい。帰りの電車で、出かけようよと言うからどこに?と聞いたらどこでもと言うのでどこでも連れてってくれるのかあなどと思う。幸いラインはぽつぽつ来る。万が一あれであれであれだったらと思ったがそんな様子もないみたいで安心する。いまのところ。

 

暗い道を長いことたどってきて、力も尽きた頃に、東の空が赤く明けそめて、あたりの枯草が穂先からあからむのを見渡し、着くべきところに着いたことを知る。

古井由吉「この道」

いい加減な文章を老境の境地を借りて〆る。今日も街中で赤い被写体を探したから。