あんだんて
あんだんて
私は歩く
昨日の綻びをなおすように
絡まった糸ゆるめるため
海底火山が噴火したその震動をきいていたなら私はもっとうまく歩けたんじゃないか。綻びが消えてなくなる降ってくる砂で。失われたポンペイの遺跡が動き始める。黒いハイヒールの中で腫れた指が痛んで頭は呆然とエスカレーターでよろける。目黒から五反田、新宿、高円寺。誰かからの手を探して。
絡まって解けるを繰り返す、いつか糸が切れてしまうまで。歩く震動が遠い海の向こうまで伝わったら。きびきびと、ゆらゆらと。海面上昇だ。海の藻屑となるまでに、どれだけの手に触れられるだろう。手を取られる。何十パーセントかあなたのものになる感覚。ただ珍しいおもちゃを手に入れただけと思っても、この瞬間に消えてしまっても、手を取ったその重力は消えないから。
歩いて、踏みつけて、踏みつけられて、地べたの掴む土もないアスファルトを、影型に切り取る