夕まぐれして失せにけり

サーモンピンクの敷物に落ちるシャンパングラスの影。いつもの小さな茶碗蒸し。テーブル席にひとりの男性客。隣の50代ぐらいの男性にはあとから若い女性が来た。この店で女の一人客はまだ見たことがない。地下への階段をよっこらしょと降りていく。私はいつも疲れてる。

食べるものは大体決めてきた。メニューに載ってないモン・サン・ミシェルの羊だかにちょっと惹かれつつも気持ちは揺るがない。でも後でやっぱり食べておけばよかったかななどと。頭が固い。

最初のヤリイカファルシヤリイカの中にチョリソーなどの詰め物がしてあって下にトマトとパプリカのソースが敷いてある。スペイン風。シェフがスペイン出身でとか初めて聞く。イカがぷりぷりしてておいしい。

ワインを飲みに行く。でも料理も楽しいしおいしい。

青と黒の袖のないプリーツのワンピースに随分昔に買った黒いハートのついたベルト。髪はポンパドールみたいのにしてみるけどやっぱり変だと結局いつものようにまとめてクリップで留める。ピアスもパールをつけてみたり、いやあらたまりすぎる。いつもアクセサリーはピアスしかつけないのがほとんどだけど、胸が随分あいてるし、小粒のパールのロングネックレスをつけてみる。慣れないから巻き方を変えてみたりずらしてみたりそんなパーティーに行くわけでもないのに。外してみたり。でもやっぱり胸元が寂しいからつけることにする。鏡の前でバカみたいに悩む。

まだ外は明るいのだ。日差しにあからさまになる。

夕闇に溶けられるのはまだ先