川越

写真屋の現像待ち。フイルム1本、その中に何があるか。
ここのところ日替りでひとに会っている。それぞれの印象が混じりあってしまう。全く違う人たちだけれど自分はひとりしかいない。いろいろなものを食べてもう何を食べればいいのか分からなくなる。何を食べたいのか。
あっという間に日が暮れてすぐに帳が下ろされる。あなたは誰だろう。まだ夜になる前に会うのは楽しい。変化が感じられて。喫茶店で日が陰っていくなかで、じっと私の顔を見ていた人がいた。こちらが俯くしかないくらい。その人とも二度しか会えなかった。
距離感は難しい。手を握るそぶりをしたら後で怪しい動作と言われたという。昨日の人。川魚専門の変わったお店に入り、ビールとお酒を飲んで、なまずの天ぷらやうなぎの肝焼き、白焼き。この人と話をしたいのに、もっと話を聞きたいのに、おかみさんのお喋りが止まらない。それにいちいち付き合っている。
教えてくれた、洞窟のような美術館に行く途中でも、でかい小学生みたいな子に掴まって、対等に話をしていた。こっちは閉館近くでやきもきしながら、もう夕闇も近づいてる。私は子どもが苦手だから少し感心しながら、なんだいい人なのかと、やっとやり取りが終わったらなんだか解れていた。
楽しい食事。すっかり夜の帰り道、ねえ、手繋がない?、などと。私にとって手を繋ぐ敷居がずいぶん低くなったのか。いや単純に、そんな雰囲気だったから。そのほうが楽しい。ひとに触れることは。