ところが私は何も覚えていない

帰り際さりげなく手を握ってくれた。営業の一部かもしれないけどちょっと温かい気持ちになる。知らぬ間にお酒も入ってしまって電車の中で舟を漕ぎながらなんとか乗り過ごさずに帰宅する。金曜の夜。

あまり人の顔を見れない。向かい合うことは特別に思える。向かい合いじっと相手の顔を眺めることは。そして間近で見つめ合うことは。

あまり顔を見る必要もない、カウンターで会話が弾み、確か黒っぽい服を着ていた。それくらいしか見ていない。お尻を噛まれたしベルトでも叩かれた気がする。最初に何をしたっけ。大体キスから始まるけれど。最初からどうにかなっていたのかも。かわいいねと言われながら痛くされる。

暗くて何も見えない、何も見る必要のない場所から出てきた時、それはもう予期されていた?

痛い。気持ちいい。あなたは私を笑ってる。

電車の中で読み始めた「O嬢の物語」が思った以上に猥雑で、背徳で。口と足を閉じることを許されない女性の話を足をぴったり閉じて読む。

モリニエのつけていた、たぶんゴールドの足輪が欲しい