tetzbo

逆上がりってなんでできないといけなかったんだろ。親と公園で練習までして。鉄棒に、ただぶら下がってれば、戯れていればいいんじゃないか。別に回らなくたって。それが技術というものだから、算数みたいにできなきゃいけなかったのかな。たとえば鉄棒でくるくる回れる子が体操選手になったり。

金属は冷たく重たい。大人になってぶら下がる必要もなくなった鉄の棒が掌の中にある。tetzboというネーミングは遊び心を感じさせる。鉛筆の見た目をした金属のボールペン。小さな一つの構築物のようだから、建築をやってるKにはぴったりだと思った。

長いワンピースだし厚手のコートも着てるのに寒くてしょうがない。真っ赤な四川料理を食べてもホットウイスキーを飲んでも一時的に温まった体がすぐ冷たくなる。生理直前の不安定さ。池袋で食い倒れをしようかと冗談めかして、もう一つのスイーツのお店に行こうとした時違う場所に行くことになる。

ホテルジプシーなんて一番嫌なこと。こういうの嫌だな、とはっきり言ってしまう。呆れるほどにどこも満室。それぞれを合わせれば数え切れないほどの部屋で、一体何が行われているのやら。大通りの開けた場所。あそこに先生のつくったものがって見覚えのあるビル。コンクリート剥き出しで角は削り取られたようにカーブしている。先生に怒られちゃうな、と呟いてその細長いビルを見上げる。このカーブの意味だとか。ホテルジプシーの最中だというのに、二人して、よくよく見れば雑多なビルの中で凄い異彩を放っている。いつだか確かに写真を撮った。池袋なんて嫌というほど歩いてるから。

肉棒とはよく言ったもの。男は一生持て余しているのか、それともただぶら下がってるだけでもはや棒という意識もなくなるんだろうか。大きすぎるもの。髪が痛い。乳首も痛い。体は不快。声が出ても気持ちは冷めてる。そうじゃないんだ、そうじゃない。もっと気持ちよくなれるはずなのに。今年初めてするという。この年の終わりに。家ではできそうもないから出していくという。ズボンの中でずっと勃起しているのは大変だろうな。眼鏡の奥に隠されていた目と意外とガッチリした体。溢れ出る精液を凝視する。

寄りかかってきた頭を撫でる。

複雑すぎる感情に、今夜もお酒、

で流れ去る訳もない感情