shibuya

まだ空の焼けたあと、日暮れ時。Tと45階の屋上に上がる。真っ黒いエレベーターに乗って、浮遊感に微かな目眩を覚えながら。どこでもない。ここは確かに東京で、渋谷だけれど、こんなにきらきらしているものが、現実とは思えない。暗闇が深いほど輝くような。初めて会った人と、見るのは少し眩しすぎる。

15時に会ってコーヒーを飲む。子供騙しみたいな小さなプールがあって、少しずつ日が暮れていく。ジャケットも何か皺が寄ってるし、話もたいして盛り上がらず、また変な期待をしていた自分が嫌になる。帰りましょうか。ああ、帰るのか。駅に向かい、見上げればそびえ立つ高層ビル。わざわざ窓を斜めに切るような、山の尾根のようなあのデザインはなんなのか。前から疑問に思う。そもそもあのビルが何なのかよくわかっていない。どんどん建設されるビル群になにがなにやら、ついていけない。

あれは何の意味なんですかね、面白いですよね、展望台があるんですよね、行ってみる?え、今行きます?ああ、こっちか。急展開。shibuya sky 大人2000円。え、なんなのこれ。ただの展望台かと思ってたのに。あ、つるとんたんがある。うどん食べません?

日の名残もか細くなる。ガラスに沿って並んでいる、見つめている人の後ろ姿。なにを思っているのだろう。自分たちはこんな街に住んでいるのかと、思っているんだろうか。東京はこんなところなのかと。あるいは一緒にいる人との時間。見つめているのは同じものだろうか。現実離れした、でも確かになんの障害もなく上に空のある屋上で、寝そべっている人。ほとんどが若者

照明に照らされて映り込んだ自分を撮る。そばにTさんも写っていた。よくわからない。でも楽しんでいるみたい。ビールを飲んで、うどんを食べて。やっぱり東京は夜ですね。いろんなものを隠してほしい。体の触れないコミュニケーションは疲れる。

楽しかった。

楽しかったですか?

オフコース

ならよかった

疲れたけど、お茶で終わらなくてよかった

 

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