bolero

緊張と夢見がちの共存

何かを待っている

でもその先に何があるのかはわからない

 

再々度の銀座にて、Tさんと会う。待ち合わせ時間より早く行ってrtで物色。大枚をはたいて買われたと思われる高級ブランドの服たち。そしてすぐにか、飽きたのか手放されたものたち。さすがに上質そうな生地であったり奇抜なデザインを手に取ってみたり。オンラインから取り寄せた濃いピンクでオープントゥのパンプスが写真で見たより落ち着いた色でサイズもぴったり。こんなかわいいルブタンも悪くない。ヒールは一番足が綺麗に見えると言われる10センチ。miumiuのワンピースは年齢的に迷ったけど紺にきれいな黒のレース、素材はシルクとわかり決断する。紺は落ち着く。

あれこれ試着するとあっという間に時間が経つ。なんとか時間ギリギリに。あとはTさんに着いていくだけ。今日は一体どんな場所に連れてってくれるんだろうと浮き立ちながらもまだ緊張している。会うのは3回目でも今まであまり出会ったことのないタイプの人。年齢よりも落ち着いて見える。決して焦ったりしないような。仕事も謎だし。まだ夕方にもなる前の早い時間から会ってくれる。

古道具に花など生けてある喫茶店でお茶と最中を頂きビルの上では一風変わったお花見気分で窓外の東京タワーもちらちらしながらカクテルにウイスキー。チョコレートの秘密を知ったり。だんだんほぐれて甘くなってくる。ウイスキーに氷が溶けていくように。オイルサーディンにたっぷりネギを乗せて焼いたのがすこぶるおいしい。少しも臭みがない。Tは北陸出身で魚を食べて育ったという。そういえば方言をきいてない。いつか聞けるだろうか。

これで終わりかなと思っていたら最後に待っていた。赤い液体の時間。ウイスキーは鼻からどかしてリセットしてなどと言われる。ワインもお任せ。干したイチジクと、ウォッシュチーズ一切れと、赤ワイン二杯。キャンティボルドー。店内は白々しく明るくお客も他に一人だけ。グラスに残った液体を見つめる。最後にわずかに残ったところが一番おいしいのだと。グラス中に満ちた香りとともに。言葉も出ない。あまりに官能的で。一人で飲んでもこんな感覚に陥っただろうか。見えないものを共有していること。そんなものがかけがえの無い時間になる。見えないダンスのような