湯島

ピンク色やら黒色やら、ネオン。あの辺は昔花街とはどこの話だったろう。Tさんはお酒と飲み屋とそれに付随するもろもろに詳しい。細い裏道まで、ここを行けばどこへ行くとか方向音痴の人間はただ手を引かれてついて行くだけ。ビールと日本酒何杯かでもう手が止まってしまって、そんなたくさん飲んだわけじゃないのに。後で、体調がよくなかったかな?という言葉にああそうなのか、体調が悪いんだと気付く。寝不足が一番よくない。仕事中も少し目眩がしたりした。朝の筋トレもサボりがちで、いつものスクワット三十回も体が重い。

私のこと好き?、とか可愛げがあって、ただ受け流してくれてもいいのに。重たいとかめんどくさいとか邪推して、結局ひとの考えることは分からない。その人が今どんな状態にあるのかも、たまに会うくらいでは分かりようもないし聞こうとも思わない。ただ会う約束がなくなってその後連絡もないだけで。それだけでなんでこんな複雑な感情になるのか。一体Hのことを考えているのかTさんのことを考えているのかその他の通り過ぎたあるいは通過中のあるいは自分自身のことを考えているのかそれすらも分からない。

風景が通り過ぎる。Tさんのキスは長かった。きっと味わうことが好きだから。きっとあのネオンと裏通りの猥雑さをずっと覚えているだろう。あの人と最初にした時もとても複雑な感情だった。あの時はスカイツリー。肝心な別れ際。電車が動き出すまでホームに立って恥ずかしいのかよくわからないけど無表情で手を振ってくれる。電車の中でこちらも気恥ずかしいし可笑しくなってしまう。ニヤけた顔が窓に映っていたかもしれない。何か大昔に似たようなことがあったかもしれない。

素肌をあらわすときもはっきりとわかるほど濡れた場所に触れられる時もそこへ顔を埋められるときも、とても恥ずかしかった。

左手がひどく荒れている。いつも左手だけ荒れる。繋がっている時も時折他のことを考えていた。違う感触のこと。

随分、入り組んでる。