2022-01-01から1年間の記事一覧

銀座

同じワンピースで同じく髪をアップにして同じ銀座の違う路上でキスされる。そんなことはどうでもいいのに。朝から雨。朝食を終えた頃にTさんからラインが来る。欠けていたものが充ちる気がした。つくづく後朝の文は大事だと思う。朝までいたわけではないけれ…

setouchi

鏡に映ったその目は獲物を狙う目をしている。攻撃態勢。流れているのはいつものグールドのモーツアルト、ピアノソナタだけど。優雅ないつもの朝。あるべきものがあるべき場所にある、いつもの部屋。自分の部屋。9日間の一人旅で私はどんな目をして、海や街や…

南青山

蔦の絡まる奥まったところにあるドア。初めて来た時は開けるのに勇気が要った。この扉を開けていいものか。確か雨が降っていた。もうコロナの時期だったのか横の窓が半分開いていて雨粒がぴちゃぴちゃ跳ねるのが見えた。その時はきっと庭のほうを向いて座っ…

週間予報

いつの間にかしっかりとした雨音。Tさんからのラインに週間予報が貼ってあり雨マークだらけ。まるで梅雨みたいですねって。ほとんどごろごろ、ベッドの中。でも食べることだけ沸いてくる。ウーバーを見てカートに入れるまでして思い止まる。冷蔵庫の中には冷…

euphoria

すはだかにショール わずかな桃色にいろさし とおるすきまはぜ ぬきあしくつおん とんかちにちようだけの もっこうざいくして みみすましむおん とうふうりのみ さやうなら きはだのざらり くわうおやゆび もものしたうえ ひゃっこうのしたえ まどろまどろの…

おじさん

おじさんは足を骨折してリハビリ中で引きずりながら歩いている。それでも歩くのが速くてゆっくりと思うと遅れをとる。飲みに行きたいと言うから3回来てくれたら行ってもいいと言ったらほんとに3連続で来た。連続で来るとは思わなかった。上野に〇〇っていう…

湯島

ピンク色やら黒色やら、ネオン。あの辺は昔花街とはどこの話だったろう。Tさんはお酒と飲み屋とそれに付随するもろもろに詳しい。細い裏道まで、ここを行けばどこへ行くとか方向音痴の人間はただ手を引かれてついて行くだけ。ビールと日本酒何杯かでもう手が…

ナダ

画面に映った顔は変わってないようでやっぱりどこか変わっている。確実に。老けたのはそりゃ年取ったもの。でも整っているようにも見える。ウェブカメラなんて、というかPCに内蔵のものだけど、いつ以来に使っただろう。誰も話し相手もいないような時、チャ…

contact

ちゃんとしてるように見えて、Tさんは機械に弱いのかしょっちゅうスマホトラブルに見舞われてる。アップデートしたらLINEアプリが消えて問い合わせしたりしてなんとかかんとか。よくわからないけど大変だったらしい。 ここ数日は落ち込んだり回復したり。抗…

come

重さのことを考えるたびに憂鬱になる。 自分の重さ あの人と付き合ってた時は痩せてた。なんでこんなに太ってしまったんだろう。 元に戻ったとも言えるけど 今日はお休み。外は雨。物思いにも耽るもの。 抗うつ剤のせいもあるかもしれないし。それにしたって…

「浅草紅団」

川端康成「浅草紅団 浅草祭」講談社文芸文庫 昭和初めの浅草に著者自身が潜入するようなルポ風小説。不良少女に娼婦、浮浪者。浅草公園は日本中から失業者、家出人、犯罪者が集まる、日本の掃き溜め。浅草公園てどこだ?と検索してみたら出てきたのは浅草公…

徒歩2分

ぱっとしない日。指名は一人でゼロよりはマシだけどほとんど電話も鳴らず閑古鳥なお店。大丈夫なのかと思う。事務所が待機場所にもなっていて人数も多くなくお店の人もほんわかしてるのでアットホームとさえ言える。こたつみたいなテーブルにはお菓子とかパ…

寄りかからず

ひとり立つことは孤独なることと思う朝 書店に染み渡っていく月の光は揺らぐごと 歯噛みするように食べる皿のフランス料理 美味しくないフレンチなどあなたのもの味わいたい コンビニで買って濁す腹のうち ひとり立つ歩く跳ねる部屋のうち 店も相性と言うあ…

mysterious #2

終わっても延々にこのままでと思うくらい。キスされたり抱きしめたり見つめ合ったり。ゴムしてるとこんな時間があるのがいい。繋がったまま。離れる時は剥がれるようだ、体が。その後もこっちおいでとくっついている。何か言いたいけど何を言えばいいのかわ…

sofa

土曜に会える予定だったのが日曜になって土曜つまり明日にはお仕事入れて日曜の夜まで耐えなければ。昨日撮ったセルフを編集しアップしてからスーパーに買い出しに行く。途中でなんだかやり切れなくなる。欲情に襲われて。セルフには意識せずともその時の自…

bolero

緊張と夢見がちの共存 何かを待っている でもその先に何があるのかはわからない 再々度の銀座にて、Tさんと会う。待ち合わせ時間より早く行ってrtで物色。大枚をはたいて買われたと思われる高級ブランドの服たち。そしてすぐにか、飽きたのか手放されたもの…

joy

ガラス瓶に入れたヒヤシンスの 水があっという間に枯れていく 花を咲かすということは それだけエネルギーを使うことなのだ ボンベイサファイアの瓶に挿したラナンキュラスは 白みを帯びて硬直している しわしわになった花弁の声のように 部屋に流れるモーツ…

Fantasia in C minor

ようやく生理も終わる。昨日遊びに行こうかなと思ったけどトイレで少量どろっと出てきてああ無理かと。代わりに銀座に飲みに行った。Tさんはいろんなバーを知っていて連れて行ってくれるので、バーもいいものだなと気が向く。以前一度来て再訪したペンギンの…

愛の渇き

アマプラで監督は知らない人だったけれど三島由紀夫原作の「愛の渇き」を見た。主演の浅丘ルリ子がお人形さんみたいにきれいでそれでいてエロくて声が素晴らしくよい。あんな声になりたい。貴婦人に相応しい。そして一歩一歩つっかえるように歩く。よろめく…

この道

明日は雨が降るでしょう。てくてく歩いた足跡も洗い流してしまうでしょう。 明日は雪が降るでしょう。歩いてきたはずのこの道もやがて見えなくなるでしょう。 風邪をひいた。私はたまにしか風邪をひかない。体調を崩すことはある。心も体も繋がって。夜にな…

bar goya

帰宅してすぐ寝てしまえばいいものを。混乱だったり余韻だったり消化しきれないもの、そんなものはベッドで眠りにつきながら小さな死の中で葬ってしまえばいいものを。 印象だけ、内なる声に耳を傾ければ慌ただしく見苦しい真似もしなくて済むのかも 隣にい…

叫びとささやき

私は叫ぶ 赤い部屋で 真紅のビロードの 埃が吸い集めた 声の残像 深い眠りの 血塗られた揺籠 白き衣擦れ ささやきのカーテン 赤、赤、赤 赤で画面が埋まっていく。染められた。街中で注意喚起が図られる。なんと溢れていることか。血は普段隠されているのに…

ポチからのラインが少なくなった。ポチは犬だがワンワン鳴かない。人間の言葉を話す。懐いていた犬がそっぽを向いたような悲しさ。返信がない日があってポチ!!と怒ったら50代の女性に一晩奉仕させられていたという。挿入はしてませんというご丁寧な情報ま…

永遠回帰

永遠回帰 あの人は形を変えない アフロディテの頭部 全てを見尽くしたその目は盲目 盲目の光 欠損は余剰となる 分子へと消えた欠損が永遠の 永劫の光となる 映し出された分身が融和をはかる あなたと、あなたに落ちる影と 言葉にならなかった言葉の しまい込…

passage

passage 通りすがり 小学生の時外国から転校生が来たことがある。もしかしたら中国人や韓国人はいたかもしれないが外見であきらかに自分達と違う子、というのは初めてだった。中東かアフリカの方かよく覚えてないが髪が縮れていた気がする。どうしてそんな状…

noir

飲み干すとすかさず注がれるワイン グラスの傾げた湛えられた 溢れるのを待つ 待たれ溢れたなみなみと うねり溢れた液体の 機体の尾翼が触れそうになる 尖った骨の尻の上の 触れられる指が伸びる 大伽藍の窓のように ステンドグラス 薄い波打つカーテンの光…

「キャロル」

昨夜は指を入れてしまった。内臓に触れるかのように。村田沙耶香の「変半身」にそんなような描写があった。たまに下着の上から触ることはあっても直接指で触ることはめったにない。お腹に力を入れ、膣を収縮させ、悶えるだけで終わる、いつもは。夜の時間、…

klepsydra

気圏にさまようあの構想の魂が彼を襲った。彼は夢の共和国を、詩の主権領土を宣言した。何万エーカーとかの地域、森のあいだに投げ込まれた布切れーーそこに彼は幻想の専制を声明した。・・・・・・狼や盗賊に追われた人は砦の門に辿り着けば救われる。勝利のなか…

暗い旅

地下鉄を歩いていてふと街で出会うあり得ない確率を思う。どんな顔をするだろう。あなた、あなたと呼びかけ続ける倉橋由美子の「暗い旅」を読んでいたせいで。あなた、と呼びかけられる主人公が悲嘆の涙に暮れ絶望の淵に落とされる度に私は甘美な気持ちにな…

誰かといる時は特別な時間を過ごしたい。その人といること自体が日常を外れている。鳥の囀りみたいに何を捲し立てる必要があるのか。内側の声を聞かせて。死について お尻を叩かれる。痛くて身を捩る。まだ病み上がりだというのに、まるで鬼気迫るみたいに。…